私の修行時代は、「見て覚える」のが当たり前でした。でも、ちゃんと教えてもらうほうが早く仕事を覚えるし、仕事ができれば楽しくなるはず。そこで、成長やキャリアの考え方は人それぞれなので、まずは声をかけて様子を見ながら、自分の知識や経験を惜しまずどんどん提供します。繰り返すうち、最初は受け身だった人が能動的に動き始めるようになると本当に嬉しく感じます。
調理の仕事では、ただつくるだけでなく、食材管理や仕込みにはじまり、安全性や衛生面、味、盛り付けなどを、きめ細やかに“整える”必要があります。私が最も重視しているのは「味見」。完成一歩手前で、材料や天候などで揺らぎがないか、五感を使ってしっかりと確認します。”いつもの味”を提供するために、腕を磨き、試行錯誤しながら工夫のしどころを考える。毎日が勉強です。
かつてオーストラリアにいた頃、食材が十分にない中で和食を表現する面白さ、難しさを実感しました。BYOでもいろんな勉強や挑戦をさせてもらい、和食の懐の深さを感じています。軸となる「だし」がしっかりしていれば、どんな食材も”和食”にできる。今ならもっと和食の魅力を伝えられるという自信があります。家族も「一緒に行く!」と乗り気なので、海外勤務のチャンスがあれば、まっさきに手を上げたいと思っています。